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―スピンオフ― 潔白・純愛 『赤坂成人・川井久実編』73

last update Last Updated: 2025-01-23 17:00:11

ナースステーションに確認すると「お待ちください」と言われてしばらく待っていた。赤坂さんは芸能人だから、簡単に会えないのかもしれない。

「どうぞ」

案内されてると広い個室だった。

「失礼します」

中へ入ると赤坂さんは背もたれを上げてベッドに座っていた。周りには花が飾られている。

「おう、久実」

「赤坂さんっ、大丈夫ですか? どうしたんですか?」

心配でたまらなくて駆け寄ると、神妙な顔をした。

「俺……末期かも」

「えっ」

心臓がズキンとした。重たい病気になってしまったのだろうか。

「悲しいか?」

「当たり前です」

「じゃあ、死ぬまでそばにいて」

頭の中で整理ができなくて、だんだんと涙が浮かび上がってくる。

そんな私の腕をつかんで自分に引き寄せた。

頭を撫でた赤坂さんは、満面の笑みを向けていた。

「やっと久実に会えた」

「…………あの、何の病気なの?」

「久実が俺を好きって言ったら教えるわ」

相変わらず、意地悪だ。

ちょっと睨むと、赤坂さんは楽しそうに笑う。

「久実。ごめん。お前が可愛いから意地悪したくなっちゃった」

「いい加減にしてください。どうして入院してるの?」

「怪我。すねにヒビ入った。まあすぐに退院して杖ついて歩けるから、心配はいらない」

安堵感からどっと力が抜けた。椅子に座って赤坂さんを見る。

「心配でお見舞い品も買わずに来ちゃいました」

「いいよ。久実がキスしてくれれば」

久しぶりに赤坂さんとやり取りをして幸せな気持ちになっていた。

やっぱり、私は赤坂さんからたくさんの元気を与えてもらっていると実感する。

「退院しても家のことやるの、大変だな……」

おもむろにつぶやかれた。

彼女だったら間違いなくお世話をしただろうけど。私はそういう立場ではない。

「久実、来れる日、来てくれない?」

「……無理だよ」

「なんで? 男出来た?」

「は?」

「OLさんって感じになってさ、ますます綺麗になって。少し会えない間にこんなに変わっちゃうんだな」

切ない声で言われると、胸が痛む。

「働くことで精一杯だから……彼氏なんてできないよ」

「わからんぞ。狙ってる男がいるかもしれない」

ありえないことなのに。

赤坂さんは私を思ってくれているのに、気持ちに答えることができなくて胸が痛くなった。

「……まあ、会いに来てくれて嬉しかった」

「元気そうでよかった」

二人に沈黙が流れる。

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    美羽side結婚パーティーを無事に終えることができ、私は心から安心していた。 私と大くんが夫婦になったということをたくさんの人が祝ってくれたのが、嬉しくて ありがたくてたまらなかった。 しかし私が大くんと結婚したことで、傷ついてしまったファンがいるのも事実だ。 アイドルとしては、芸能生活を続けていくのはかなり厳しいだろう。 覚悟はしていたのに本当に私がそばにいていいのかと悩んでしまう時もある。 そんな時は大きくなってきたお腹を撫でて、私と大くんが選んだ道は間違っていないと思うようにしていた。自分で自分を肯定しなければ気持ちがおかしくなってしまいそうになる。 あまり落ち込まないようにしよう。 大くんは、仕事が立て込んでいて帰ってくるのが遅いみたい。 食事は、軽めのものを用意しておいた。 入浴も終えてソファーで休んでいたが時計は二十三時。 いつも帰りが遅いので平気。 私と大くんは再会するまでの間、会えていない期間があった。 これに比べると今は必ず帰ってくるので、幸せな状況だと感で胸がいっぱいだ。 今日は産婦人科に行ってきて赤ちゃんの性別がはっきりわかったので、伝えようと思っている。手作りのケーキを作ってフルーツの中身で伝えるというささやかなイベントをしようと思った。でも仕事で疲れているところにそんなことをしたら迷惑かな。 でも大事なことなので特別な時間にしたい。

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    「そんな簡単な問題じゃないと思う。もっと冷静になって考えなさい」強い口調で言われたので思わず大澤社長を睨んでしまう。すると大澤社長は呆れたように大きなため息をついた。「あなたの気の強さはわかるけど、落ち着いて考えないといけないのよ。大人なんだからね」「ああ、わかってる」「芸能人だから考えがずれているって思われたら、困るでしょう」本当に困った子というような感じでアルコールを流し込んでいる。社長にとっては俺たちはずっと子供のような存在なのかもしれない。大事に思ってくれているからこそ厳しい言葉をかけてくれているのだろう。「……メンバーで話し合いをしたいと思う。その上でどうするか決めていきたい」大澤社長は俺の真剣な言葉を聞いてじっと瞳を見つめてくる。「わかったわ。メンバーで話し合いをするまでに自分がこれからどうしていきたいか、自分に何ができるのかを考えてきなさい」「……ありがとうございます」俺はペコッと頭を下げた。「解散するにしても、ファンの皆さんが納得する形にしなければいけないのよ。ファンのおかげであなたたちはご飯を食べてこられたのだから。感謝を忘れてはいけないの」大澤社長の言葉が身にしみていた。彼女の言う通りだ。ファンがいたからこそ俺たちは成長しこうして食べていくことができた。音楽を聞いてくれている人たちに元気を届けたいと思いながら過ごしていたけれど、逆に俺たちが勇気や希望をもらえたりしてありがたい存在だった。そのファンたちを怒らせてしまう結果になるかもしれない。それでも俺は自分の人生を愛する人と過ごしていきたいと考えた。俺達COLORは、変わる時なのかもしれない……。

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